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【ノーベル物理学賞 – 好奇心】

2021.10.09

 今年のノーベル物理学賞に、アメリカ・プリンストン大上席研究員の真鍋淑郎さん(90)が受賞というニュースが舞い込んできました。

 

 90歳という年齢を感じさせない程、ユーモアとウィットにとんだ記者会見で、全ての方々を笑顔にさせる素晴らしい内容でした。これは研究者ならではなのか、アメリカ在住が長いからなのか、とにかくセンスあふれるコメントに感嘆した日本人も多いのではなかろうか。

 

 「私はいきなり何かを考え始める。すると、運転中も信号にも気を配れなくなる。でも妻はグレートドライバー。私は100%研究に集中できる、中華や和食、イタリアン。毎日、妻の料理を楽しんでいる。食事に関して私は最も恵まれた人間だ」

 

 真鍋さんの奥様に対する感謝の気持ちの言葉にも、会場には笑顔と笑いが起きていました。伝え方も、言葉のチョイスも全てが素晴らしく、聞く者の心を惹きつける力が真鍋さんにはあるということでしょう。

 

 そして奥様のお陰で研究に没頭出来たという感謝の言葉の後、御自身の研究に突き動かせた原動力をこうコメントされていたのが印象的でした。

 

「60年代には、気候変動がこれほどの大問題になるとは想像していなかった。研究を突き動かしたのは好奇心。最も面白い研究は好奇心によって行われたものだ」

 

 繰り返し、「Curiosity(好奇心)」 を言葉として強調されていました。それだけに、日本の現状については

 

「好奇心に基づく研究が少なくなってきているのではないか」

 

 現実問題として日本は研究費がそこまで大きくない為、長期的ビジョンでの研究が出来る環境が無いのであろう。即結果が出ないものには投資が出来ないのだろうという推測は容易に出来る。日本とアメリカでは研究環境が大きく違うがゆえに、いくら好奇心に基づいても研究費用が捻出されないということは多くの研究者のジレンマでしょう。

 

 それでも「好奇心」という言葉を、90歳の方が繰り返し発言されるというのは新鮮以外の何物でもありません。人は生涯勉強し続けることが出来る生き物だということを御自身で証明されていらっしゃるということですね。全ての研究は好奇心からというのは良く言ったものですが、我々一般人の人生も同じだと思います。

 

 我々の人生もまた「好奇心」からスタートし、何かに発展していくものなはずですし、そうあってほしいと私は思います。「好奇心 = 興味」であり、これがあるからこそ人生は豊かになり、何かのモチベーションになり、生きるための大切なものを与えてくれる大切な要素だと感じます。

 

 多くの日本人が良く言うフレーズに、「若い頃、勉強しておけば良かった」っと、誰しも一度は聞いたことがあるかと思います。これを聞くたびにいつも不思議に思いますが、人の人生とは最後の時まで勉強できるわけで、どうして勉強することが若い時代の専売特許みたいになっているのだろうかと。

 

 「勉強しておけば良かった」と思うなら、「今勉強すればいいのに」っと普通に思ってしまいます。大学生とは20歳前後の専売特許ではありません。何歳になっても大学行けばいいし、実際大学が20歳前後と考えている国は、日本くらいのもので、他のどの国でも年配の方々が普通に通っています。

 

 日本人の固定観念から、学ぶことが若者だけのものになっているのは残念でなりません。言い換えれば、「好奇心」を持つことは若者でなければならないとも聞こえなくないということですよね。

 

 しかしこういったことを考えれば考えるほど、90歳でなお「好奇心」を追い求めている真鍋さんの偉大さと素晴らしさを感じずにはいられませんよね。だから我々凡人との違いといえばそれまでですが・・・。それでも「好奇心」を追い求めた人生を歩みたいという気持ちは強く持てました。

 

 そういった意味でも、そういった90歳の真鍋さんに対して、「好奇心」を持ってしまった会見でした。