【日本人の美学と誇りがドジャース世界一へ導く】
2025.11.062025年11月。北米メジャーリーグの頂点に立ったのは、ロサンゼルス・ドジャースでした。数々の栄光と重圧が渦巻くこの舞台。その中で最も熱く、最も深く、我々日本人の魂に訴えかけてきたのが「山本由伸」という一人の投手の闘いであったと断言できます。
第2戦、第6戦、そしてシリーズ最終決戦である第7戦。すべての流れを左右するキーマウンドに、彼はとんでもない精神力と共に立ったのでしょう。特に第6戦では先発として7回13奪三振の圧巻の投球。そして驚くべきはその翌日、第7戦。中0日でクローザーとしてマウンドに上がり、再び勝利を呼び込んだのです。この姿を見て、世界の人たちは一体何を感じたのでしょうか。
「根性」 この言葉がこれほどまでにしっくりくる瞬間が、現代のメジャーリーグに存在するとは誰が想像したでしょう。体の限界を超えた集中力、魂のこもった一球、表情ひとつ崩さぬ覚悟。そこにはまさに歴代の日本人投手が培ってきた、「昭和の気迫」を感じました。
現代野球は、データの世界です。回転数、スピンレート、リリースポイント。合理性を突き詰め、効率を最大化する科学のスポーツ。だからこそ、“精神論”や“気合い”といった言葉は、時代遅れと揶揄される場面も多くなりました。しかし山本由伸は、そのど真ん中で、「それでも最後にものを言うのは“心”なんだ」と証明してくれたのです。
メジャーでは投手の球数制限や起用間隔は厳格に管理され、無理をさせない文化が根付いています。しかしワールドシリーズという唯一無二の舞台は別格です。すべてを出し切らなければ、後悔が残る。トロント・ブルージェイズが32年ぶりに世界一を目指してこの舞台に立ったように、再びここに戻れる保証などどこにもない。だからこそ、山本選手は「行くしかない」と、痛みも疲労も振り払い、自らの“気持ち”だけを頼りにマウンドへ立ったのです。
私はこの姿に、ビジネスの原点を見ました。我々の世界でも、理論や戦略、ツールやKPIで語られる場面は多い。けれど本当に大切なのは、“気持ちを込められるか”どうかです。疲れていても、苦しくても、やり切れるかどうか。どんなに便利なAIがあっても、どんなに緻密なデータ分析があっても、最後の最後に勝敗を分けるのは「人間の心」であり、「根性」であり、「気迫」なのです。
どれだけ合理化が進んでも、「気合いの一球」は存在します。そしてそれは、組織を、周囲を、未来を動かす力に変わる。山本由伸の一球には、その精神力が宿っていました。
また彼の姿は「日本人としての誇り」そのものでした。異国の地で、異なる文化・言語の中に身を置き、気を遣いながらも結果で信頼を勝ち取る。彼は単なる投手ではありません。プロフェッショナルとして、世界と向き合う日本人の生き様を、静かに、しかし鮮やかに証明してくれたのです。
私たちもまた、自分のフィールドで魂の投球を続けられているか。目先の利益や、他人の目線に逃げず、自らの誇りと信念をもって一球一球を投じられているか。彼の姿は、そんな根源的な問いを私たちに突きつけてきます。
結局最後はやはり、メンタルの強さ、心の粘りが勝敗を分けるのだと思います。技術は磨ける。知識は学べる。でも「気持ち」だけは、誰も代わってくれません。そしてそれこそが、AIには決して代替できない、我々人間だけが持ち得る“最大の武器”なのです。
日本人の誇りが、ドジャースを世界一へ導きました。そして我々もまた、その誇りとともに、それぞれのマウンドに立ち続けたいと思います。



