【W杯に見る世界で勝つということ】
2018.07.03益々ヒートアップする、ワールドカップ ロシア大会。しかし本日我らが日本代表は2 – 3でベルギー代表に敗れ去った。
負けたものの試合内容はあまりにも素晴らしいもので、心から拍手を送りたい気持ちと、後15分で史上初のベスト8が見えていただけに、やはり負けた悔しい気持ちとが交錯する、何とも言えない気持ちはほとんどの日本人も同様であろう。
丁度アメリカ出張中で、その時間は移動の為、空港のスポーツバーでその試合を見ていました。元々サッカー不毛の地と呼ばれたアメリカは、今回のワールドカップに出場もしていないので、比較的冷めた印象。しかし昔と違って、全試合TV中継している為、幸運にもホテルやスポーツバーで見ることが出来た。
2002年日韓開催ワールドカップのときなんて、当時アメリカ在住の私や日本人の友人は、皆で集まってメキシコチャンネルで試合を見たものだ。当然スペイン語だから何がなんだか・・・。
さてさて今日の試合観戦中のスポーツバーで、たまたま隣にいたアメリカ人のおっちゃんがTV見ながら一喜一憂する私に話しかけてきた。
アメリカ人 「君、日本人かい?」
私 「そうだよ~」
アメリカ人 「お~!!このバーで日本人はたぶん君だけだね。私も仕事で日本企業や日本人と絡むことが多いから、日本チームを応援してたんだ。勝ちそうだよね。(この時点で2-0・・・)」
私 「どうかなぁ。でも試合が終わらないと、気になって飛行機乗れないよ~(笑)」
アメリカ人 「延長戦になったら、フライトチェンジしないとね(笑)」
こんなやり取りをしながら、一緒に談笑しながら仲良くなりそれぞれドリンク片手にカウンターでTV試合観戦。
彼はアメリカ人には珍しく、サッカー好きらしく結構詳しい。更に日本の予選最終戦ポーランドとの試合のことも記事で読んだらしく、例の残り10分での最終パス回しの論争も良く知っていた。
彼のポイントは2点。
① あれがサッカー先進国、例えばヨーロッパの強豪国がやったら、きっとここまで騒がれてなかったんじゃないかな。日本がやったからここまで言われているような気がする。普通に考えればパス回しは当然の戦略。
② 日本人はあの戦略に誇りを持つべき。勝つために最善を尽くすのは当然であり、自分の国に作戦と判断に対して自信を持たなければならない。
そこから話が盛り上がったのは、「世界で勝つということ」というテーマ。
彼は世界中を飛び回っているビジネスパーソンでで、話していてかなりシャープな印象。且つインターナショナルビジネスや外国諸国に対し、沢山の経験を持っているようだ。
お互いの結論は、「世界で勝利を掴むためには、内容ではない結果だ」ということ。あくまでもビジネスの世界の話だが、一部外国企業は勝つためなら本当に汚いことを平気で行う。およそ日本人の発想でありえないことが普通に行われる。勝てば正義という図式。
これを日本人は受け入れられない。日本人は結果よりプロセスに重きを置く傾向があるからだ。勝負に勝って試合に負ける、美しく散る等、日本人は敗者に美徳を求める。かっこ悪く勝つくらいなら、美しく死にたい。
これはまさにサムライスピリットなんであろう。
ビジネスはそうもいかない。特に日本は先進国のどの国より倒産が許されない国であるから。日本ビジネスでは負けは終了を意味し、敗者復活戦は他国のようにない文化。他先進国は、一度倒産してもチャンスはいくらでもまたやってくるし、実際掴める。
ワールドカップも同じであろう。4年に一回。人生において出場一回だけの選手がほとんどだろう。綺麗に負けても敗者復活戦は無い。更に言えば美しく負けたことなんて、数か月もすれば世界中の誰の記憶にもない。
ベルギーとの一戦、結果は敗れ去ったがたぶんこの内容であれば、今日以降国内外から称賛されるだろう。しかしこれもあのポーランド戦で美しく予選敗退していたら、この称賛もなかったわけだ。
さらに残念ながらこの称賛は、敗れた中での称賛であり、仮にベスト8に進出していた時の称賛に比べたら、っと考えると誰でも分かるだろう。勝ったら、もっと称賛されていただろうことは当然である。
そして前述したアメリカ人がふと言葉を発した。
「日本人は誠実だし真面目だし嘘つかないのは大きな長所だけど、その分スピードと決断が遅く、何よりアグレッシブに勝ちにいかない文化を変えなきゃだね。そうすればもっともっと海外進出が加速し、国も発展するだろうね。だって、製品レベルも人材レベルも世界最高だもん!世界中はMade in Japanを求めているわけだからさ。
ビジネスとは結局は勝ち負けの結果でしか評価されないわけだから。ワールドカップと同じだよ。勝つことが一番大事さ。」
全くの同意。世界で勝つには、内容や評価にこだわらず結果にこだわること。私が今回のワールドカップで一番影響された部分かもしれない。
あのボール回しがあったから見れた、素晴らしいベスト16ベルギーとの一戦。もちろん負けたことが最高に悔しいが、この素晴らしい試合を見れたすべての人に言いたい。
「西野監督とサムライブルーが、全世界からブーイングを浴びた、あの歴史的ボール回しがあったからこそ、日本国民はベルギーとの歴史的ナイスゲームを目撃出来た」
勝たねば次がない。ワールドカップは4年に一度なんだから、批判を気にしていたら世界で結果を出すことは出来ない。
あの世紀のボール回しをした日本代表メンバー、胸を張って帰国してほしい。お疲れ様 & 感動をありがとう!!
【本田という新時代のサムライ】
2018.06.28ワールドカップ ロシア大会。やはりというか、まさかというのか、日本代表本田が活躍している。瞬間的にロシアでは車メーカーのホンダを凌駕しているかもしれない程。
今まで彼のような日本人がいただろうかと考えてみると、意外と誰にもダブらない。これまで世界で活躍する日本人スポーツ選手のそれとはまた違う異彩を放っているようだ。
何が違うって、やはり一貫して「ビッグマウス」し続けていることに尽きるだろう。およそ今までの日本人の発想とは根本的に違う。世界で活躍してきた、野球の野茂・イチロー・松井・大谷、サッカーのカズ・中田達とは全く異質だ。上記の彼らは基本ジェントルマン。寡黙に近く、結果を出し続けることで地位を築いてきた。
敢えて言えば、浪速のジョーことボクサー辰吉丈一郎くらいだろうか。
今まで有言実行をしようとしてきた選手は、ことごとくマスコミに潰されてきたからだろう。
日本人はデカいことをいう人間を基本的に好ましく思わない民族性がある。それよりも、寡黙にミッションをこなし、気が付いたら努力で結果が出ている雰囲気があるとスーパースターになれる、もしくはスーパスターになりやすい。元ジャイアンツのミスター長嶋さんだけが別格だが、彼は国内だけの活躍であったからか、それ以上の人間的魅力があったからか。
そもそも日本人はミスを嫌い、挑戦をしたがらない民族だ。挑戦して、ミスをすると叩く。挑戦したことを称賛するより、ミスをしてしまった現実のみにフォーカスするからだ。
以前、元日本代表FW呂比須・ワグナーが、ストライカー目指す子供への指導法について語ったことを思い出した。状況は決定的場面でシュートを外した子供に対して。
「海外ではシュートしたことを褒める。日本ではシュートを外したことを怒る」
これではストライカーは育つわけがない。9回失敗しても1回成功すれば褒めるべきだ。子供はその一回を求めて何度も何度もトライをする。日本では1回成功しても9回失敗したことにフォーカスしてしまう。
要するに、「挑戦」したことを褒めることが大事で、「挑戦」して失敗した「結果」を攻めるべきではない。
この考え方は、私も海外に出るまで分からなかったが、指導・教育・育成において日本のそれは明らかに異質だ。人を育てるということにおいて、海外が長い本田の考え方も、そういった部分に通じている感はする。
さて、話を戻すとサムライブルーというフレーズが少しずつ定着しつつあり、日本代表をサムライと呼ぶマスコミも増えてきている。そういえば、野球の日本代表サムライジャパンは商標取っているだろうが、まあこの際どちらでもいい。
侍とはそのそも寡黙で不言実行が代名詞のように感じるだろうが、本田はまさに真逆の有言実行。となると、本田をサムライというのは違和感を感じざる得ない。しかし、やはり本田は日本の侍という誇りの気持ちも込めて、そう呼びたくなるのが日本人であり、今の本田の凄まじさであろう。
その理由はシンプルだ。彼がかっこいいからサムライと呼びたくなる。まさしく今の彼は日本の誇りだ。これが数週間前に、代表落選するかもしれないとまで言われた男の活躍ぶりかという程、今の本田は何かを変えさせる雰囲気すらある。
本田は今大会で、「ジョーカー・本田」「サムライ・本田」と呼ばれている。ちなみにジョーカーとは文字通りジョーク(Joke)を言う人(Joker)が語源だ。となると、本田はジョーカーでもサムライでも当てはまらないのでは?っというのは、言葉のセンスがないと思われるので御愛嬌(笑)。
いずれにしても、世界を感嘆させる日本人はいつの時代もサムライと呼ばれてほしい。現代のそして新しいサムライ像をもつ「サムライ・本田」が、三度(みたび)世界を脅かせてほしいものだ。
本日の運命の一戦はあいにく、フライト移動中。飛行機降りて、ネットニュースを見る手が震えそう・・・。
【ワールドカップとカミカゼ】
2018.06.25日本列島深夜0時スタートのTV番組に、驚異の30%超え視聴率。そう、ワールドカップセネガル戦の数字だ。結果はご存知の通り、2 vs 2のドロー。
勝ち越せるチャンスが多々あり、西野監督はドロー狙いではなく明らかにこの一戦で本選を決めるという戦略が見えた中で、若干の消化不良はあったことは確かだ。しかしその後のコロンビア勝利で日本にとって最高のカミカゼが吹いた。
そもそもたった2週間前に、ここまでの盛り上がりを誰が予想しただろうか。どん底の状態で、自信を喪失し史上最弱代表と揶揄された彼らが、今は自信に満ち溢れている。
数週間前に、初戦がコロンビアではなくポーランドなら少しはチャンスがあるとまで言われた日本代表に、開始早々のまさかのコロンビア一発退場 & PK。そして前回コテンパンにやられたハメス・ロドリゲスの明らかな体調不良で途中出場、途中出場してから彼のせいで更にコロンビアのバランスが崩れるというカミカゼが吹き勝利。
実は同組最強かと言われたセネガルも、明らかに前節ポーランド戦と別チームのような躍動感の無さ(これは日本が頑張ったという見方も当然あるが)。そして日本は前節と真逆で半端だった大迫が決定機を外しまくっても、西野監督が立て続けに投入した本田&岡崎コンビが得点に絡むというカミカゼ。
この時点で最終戦は、既に脱落し戦意を失ったポーランドに引き分けでOKという最高な状態。セネガルは調子を下げており、逆に調子を上げてきたコロンビアが点差のある勝利を収めれば、仮に日本が負けても最小点差なら予選突破の扉をこじ開ける可能性すらある。
それくらい今の日本代表は神がかっているというか、今風に言えば神っている。カープファンじゃないけど・・・。
メディア含めて世論がここまで掌を返すことは通常疑問符だが、日の丸を背負うプロフェッショナルである彼らにしてみれば当然といえば当然か。それだけ勝負事とは紙一重で、恐ろしいほど怖い。勝負事にたらればは禁物だが、しかし今回のワールドカップ、日本にとってあのコロンビア戦開始3分の反則PKが無ければ、その後どうなっていたのか考えるとぞっとするほどだ。
思い起こせば前回のワールドカップ ブラジル大会。今回の何十倍もの期待を希望を背負わせられ、特に良くも悪くも当時の本田の言葉を信じ、本当にベスト4も夢ではないという期待感のあった大会であった。初戦コートジボアール戦で本田が先制ゴールした直後なんて、国民皆そう感じていたはずだ・・・。そう、あのドログバが途中投入されるまでは・・・。結果は周知のとおり、そのドログバに好き放題やられ期待感で一杯だった4年前の日本代表は、まさかの一勝も出来ずブラジルを去るという屈辱の結果に終わる。
期待が大きかっただけに、本田を中心とする日本代表はこれでもかと叩かれた。まさに今回の真逆。今回は8年前の状況に似ていると言われるが、反動の盛り上がりはそれ以上ではないかと感じるほど盛り上がっている。まあ、良くも悪くも日本人のナショナリズムが毎年急上昇していることを考えると、当然かもしれないが。
私はスポーツ好きなので、当然の如くワールドカップは大きなスポーツイベントであるが、その側面すなわちメディアや国民の一挙手一投足を冷静に眺めるのもまた楽しい。実は明日から、北米出張。残念ながら最終ポーランド戦は丁度アメリカから国境越えでメキシコに入る時間なので、TV観戦は不可能。見れないからこそ、海外からだからこそ、少し冷静に客観的に日本を眺めるのもまた楽しいかもしれないと、ポジティブに考えている。
それは情報やメディアに振り回される現代人の構図だ。
2日前まで、「大迫半端ないって」が今年の流行語大賞最有力と言われた日本列島。それが今日の時点で既にひと昔前のフレーズと感じるのは私だけだろうか?時代の流れ、人の興味とはそれほど早く動くのが現代社会。逆に捉えるとそのスピード感がないと時代から取り残される。
過去のことなんて、カミカゼが一瞬で吹き飛ばしてしまうということですかな・・・。