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【911 – 前編】

2021.09.16

 「911」

 

 2001年9月11日、世界中をHollywood映画と勘違いさせるような驚愕の出来事がNew Yorkで起きた。そう、「アメリカ同時多発テロ」。

 

 当時San Diegoで暮らしており、何度目かの学生であった私は、朝起きて天気予報チャンネルをチェックしようと思いTVをつけた。が、実は程なくして消した。飛行機が高層ビルに突っ込んだ映像を見て、深く考えずHollywood映画か何かだと思ったからだ。寝起きだったからか、天気予報チャンネルを観ようと思ったことすら忘れて、その驚愕の映像だったからこそ映画と思い、すぐにTVを消したのです。世界中の全ての人がそうであったように、現実だと理解できるレベルの映像ではありませんでした。

 

 当時の朝のことは、自分自身がイマイチ不可解な行動をしていることすら、今でも鮮明に覚えています。

 

 そして何も考えず通常通り登校。するとアメリカ人の先生が泣き崩れている。見渡すと大多数の人達が、この世の終わりのような表情をして、抱き合いながら泣いていた。皆が一生懸命、New Yorkの状況を説明してきた。英語力の低い私の語彙力でも、事の重大さは直ぐに理解出来た。

 

 アメリカ本土で戦争が始まった。

 

 大袈裟ではなく、そんな雰囲気すら漂っていた。何故ならば、当初まだアメリカ上空に数十機の飛行機が飛んでいるという誤情報が飛び交ったからだ。World Trade Centerに2機突っ込んだ、Pentagonに突っ込んだらしい、次はWhite Houseか、Chicagoのシアーズタワーか、Los AngelesのWTCだ!

 

 完全にパニック状態で、今ほどネットが便利になっておらず、当然スマホもない時代。情報に翻弄された時間が過ぎ去っていく。

 

 とにかく全員家に帰ろう。自宅待機で人が多い場所には近寄らないように。そして空を見ろ。飛行機が飛んでいたら突っ込んでくるかもしれないぞ。今では冗談のように聞こえるフレーズが今でも耳に残っている。何故なら皆それを一生懸命聞いていたからだ。それだけアメリカ中パニック状態になっていた。

 

 私は家に帰りTVをつけると、当然全てのチャンネルがこのNews。英語の全てが理解出来るわけではなかったが、鮮明に覚えているのが、

 

「Pearl Harbor(真珠湾攻撃以来)」

 

 っというフレーズが、何度も何度も飛び交っていた。正直日本人としては気分のいいものではなかったが、アメリカ人からすると、アメリカ自体が攻撃されることはとんでもないくらいショックだったようだ。しかも今回はメインランドのアメリカ本土、更にAmerica No.1都市のNew Yorkであり、New Yorkの象徴的ビル。

 

 本土を攻撃されたことがないアメリカが、更にはアメリカの誇りが攻撃されたわけであり、その衝撃は我々想像以上であろう。不謹慎な表現で恐縮だが、日本人なら東京タワーに飛行機が突っ込んだと考えると、少しは理解出来るだろう。

 

 長くなったので、後半はまた。

【Field of Dreams / 現実】

2021.09.10

 前回、【Field of Dreams / 映画】を記載しましたが、これは当然フィクションでありファンタジー映画。ハリウッド映画であって現実ではない。しかしアメリカのショービジネスは、映画をも現実に導き出す。(これが商魂たくましいと揶揄することを含めても)

 

 先月8月12日、MLB(メジャーリーグベースボール)は、ヤンキース-ホワイトソックスの試合を、映画「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台、アイオワ州ダイアーズビルで開催した。なんと映画と同じくトウモロコシ畑に新しい球場を作ったのだ。しかも映画撮影で使われた球場の隣に、たった一試合の為だけに新しい球場を作り上げるMLB。

 

 まあYouTubeを見てほしいですが、試合前の演出からオシャレというか、惹きつけられます。

 

 映画の主役であったケビン・コスナーが、トウモロコシ畑から登場するところからこの現実はスタートするのです。カメラはトウモロコシ畑の中を歩くケビン・コスナーの背中からの映像をゆっくり追いかけます。そして、映画と全く同じ音楽がフィールドに響き渡ります。トウモロコシ畑を潜り抜けた先には、まさに映画のそれに近い現実の球場。しかしスタンドだけが大きくなっており、待ち受けていた大勢のファンがケビン・コスナー登場で小さな田舎町に大歓声が鳴り響きます。

 

 そしてダイヤモンド近くまで歩いたケビン・コスナーが辺りを見渡すと、なんと外野のトウモロコシ畑からヤンキースとホワイトソックスの選手が現れます。映画のメジャーリーガー達と全く同じ登場の仕方に、TV越しに自分に鳥肌が立ったことが分かりますし、当然球場のボルテージは急上昇。

 

 そして両チームの選手が登場した段階で、ケビン・コスナーのスピーチが始まります。更にそのスピーチの最後に、彼が観客に語り掛けます。

 

「Is this Heaven?(ここは天国かい?)」

 

 そう映画と全く同じフレーズで、その瞬間観客のボルテージはMAX興奮状態。30年の時を経て、映画は現実として戻ってきたのです。

 

 この試合はTVとストリーミングを合わせ、なんと約600万人の視聴者を試合を見たとのこと。MLBの試合として、レギュラーシーズンとしては2005年以後、最高の数字らしい。試合後、「映画 / Field of Dreams」の売上はAmazonで3,000位台から一気に6位にまで上昇したらしい・・・。

 

 しかしまあなんとも夢のような演出、夢のような時間でした。更に言えば、その現実の試合内容も映画さながらというか、映画や漫画でも作れないような劇的な幕切れを迎えます。あのルーズベルトゲームを超える劇的なエンディング。是非見てほしいという試合です。

 

 もちろんこれはビジネスの側面が大きく、ここには大きなマネーゲームの上に成り立っていた現実の試合でしたが、本当に夢のあるイベントでした。アメリカのショービジネスの凄まじさを思い知ったことは勿論ですが、私にとって今年一番のMLBゲームでした。

 

 これもまた、「夢は現実になる」っということかもしれません。幸せな時間を貰ったことに、ただただ感謝です。

 

  • 宜しければ、下記YouTubeリンクで御覧ください。

 

https://youtu.be/jbmZ1Oz_nTg

【Field of Dreams / 映画】

2021.09.01

 いきなりですが、我が家には「Movie Night」という小さな家族イベントがあります。これは読んで字のごとく、休みの日の夜に家族や友人と一緒に映画を見ること。アメリカでは各家族に必ずあるイベントで。早めに夕食を食べ終え、ポップコーン等スナックを片手に家族揃って映画を観る。たったそれだけの小さな家族イベント。

 

 「よし、明日はMovie Nightだ!」

 

 みたいな話が出ると、ちょっとした映画鑑賞の準備に入り、当然の如く何を観ようか!?みたいな議論が始まるのだが、それがまた楽しい小さなイベント。家族会議の結果、先日のMovie Nightはクラシックムービー、「Field of Dreams」に決まった。

 

 この映画は1989年公開されたケビン・コスナー主演の誰もが知っている不朽の名作。ウイリアム・パトリック・キンセラの小説 「シューレス・ジョー」 をフィル・アルデン・ロビンソン監督とハリウッドによって映画化された、野球をモチーフにしているが、実は夢と希望溢れるファンタジーで大人も子供も楽しめる作品。

 

 「If you build it, he will come.(もし君がそれを作れば、彼がやって来る)」

 

 このフレーズを聞いて、ぞくっとしてしまう40代以上の方々は多いのではなかろうか。実際私も野球に没頭していた10代の頃、初めてこの映画に触れ、それから少なくともこれまで10回以上は観ており、観るたびに必ず涙する思い出の名作。

 

 映画の内容は、夢を失った中年ケビン・コスナーが妻と小さな娘とアイオワ州の片田舎に移住し、貧しいトウモロコシ畑を営むというところから始まります。ある日、主人公(ケビン・コスナー)がトウモロコシ畑で作業していると、どこからともなく

 

 「If you build it, he will come.(もし君がそれを作れば、彼がやって来る)」

 

 という声を聞き、家族以外誰も信じてくれない中、更にトウモロコシ畑で謎の幻影を見ます。それはナイター設備のある野球場。そしてグラウンドには一人の野球選手。その姿から伝説のメジャーリーガー、“シューレス”・ジョー・ジャクソンではないかと思い、彼は大切な自分の畑を潰して野球場を作ればジョー・ジャクソンが現れると信じます。

 

 シューレス・ジョー・ジャクソンとは、シカゴ・ホワイトソックス所属であった伝説のメジャーリーガー。しかし1919年八百長事件「ブラックソックス事件」に関わったとして球界を永久追放された悲しい過去を持つ悲劇の名選手。

 

 主人公は、何ひとつ冒険することなかった父のようになりたくないと、周囲の反対をよそにトウモロコシ畑を潰して野球場を作り始めます。当然の如く、保守的な片田舎の村では、その彼らの行動を快く思わない人たちが大半で文字通り村八分状態。しかし自分も妻も娘も街から孤立しながら、一心に自分たちの夢に向かって野球場を作り始めます。

 

 野球場が完成しお金も無くなくなり、家計も苦しくなった1年後の夜、娘が野球場で一人の選手を見つけます。そこにいたのは確かに死んだはずのジョー・ジャクソンその人でした。

 

 「If you build it, he will come.(もし君がそれを作れば、彼がやって来る)」

 

 野球場を作ればやってくるという、その彼とは、シューレス・ジョー・ジャクソンだったのか??

 

 ちなみにシューレス・ジョー・ジャクソンは試合が始まると外野スタンドのトウモロコシ畑からやってきて、試合が終わるとそのトウモロコシ畑に帰っていきます。彼らは夢の場所、「Field of Dreams」 から出ることは出来ないのです。

 

 ここから物語は一気に動きますが、ネタバレになるのでここから先は記載しません。

 

 主人公のケビン・コスナーは、家族を持ち中年となり、夢や希望もなく、ただ黙々と家族の為に生活する日々を過ごしていました。勿論彼はそれを幸せだと信じていたはずで、それが大人になるということだと理解していたのでしょう。夢や希望は青春時代のみが持つことのできる権利だと。

 

 しかし夢や希望を持つこととは、人が何歳になっても持ち続けることが出来る素晴らしい権利であり、人生において最も大切なことだと気付かせてくれます。それは主人公だけではなく、後々登場する人物たちも教えてくれる心温まる素晴らしい映画です。

 

 若い頃、達成出来なかった後悔、挑戦しなかった後悔、間違いを犯した後悔。人は皆必ず同様の感情を抱きながら人生を歩んでいるはずです。そんなモヤモヤした気持ちを勇気付けてくれる映画がこの 「Field of Dreams」 です。

 

 「Field of Dreams」 = 「夢の野球場」 = 「誰しもの夢」

 

 そして物語終盤、この映画が何故ファンタージー映画であるかという所以がこの会話。

 

「Is this heaven?(ここは天国? or これは夢?)」

「No, it’s Iowa.(いや、アイオワ州だよ or いや、現実だよ)」

 

 これもまたこの映画によって有名になったフレーズ。映画の後半に出てくるやりとりですが、涙なくして見れない会話です。

 

 久々にこの映画を観ましたが、久々にこの映画に感動し涙し、そして久々に明日からの活力となりました。人生の最後の時まで夢を観ることのできる人間でありたいなと、恐らく子供以上に強く感じたMovie Nightとなりました。

 

 個性的な登場人物、感情移入しやすい心地よい音楽、全ての方にお勧めな不朽の名作です。